ミックスにおけるイコライザーの種類と手順

ミックスにおけるEQの基本は前項で取り扱いました。マスキングの基本等々が書かれた記事ですね。これを念頭において、実際にミックスでEQを施す時にどのような手順にすると迷路に迷い込みにくいのか、そしてEQのどのような機能を使うか、ここ2つを大きなポイントとして解説したいと思います。


二点確認が基本

EQのバランス取りにおける役割を頭に入れながらもう一度ミックスバランスに手を付けましょう。
全てのチャンネルをミュートして重要度順にバランスを取って行きます。

さて、新しいチャンネルを立ち上げる毎に以下をチェックしましょう

今足した新しいトラックは、自分が求めている周波数帯域全てが聴こえるフェーダーレベルが見つかるかどうか。

そして新しいトラックによって、先に立ち上げた大事な方の楽器をある周波数帯で邪魔していないかどうか。

この二点が確認出来るならバランス作りの為のEQは必要ありません。やったー!
驚く事にハイパスフィルターだけが必要な事もありますし、これはもう既にラフミックスを作った段階でやってますよね。

上の二つのチェックで、どちらかがダメならEQを試してみましょう。

EQとは

EQは複数のタイプのフィルターを選んで使うプロセッシングです。
この複数のフィルターはそれぞれ違った形で周波数バランスを変えてくれます。

なのでまずどれを使うか決める必要がありますよね。
バランシングでよく使う物として

シェルビング、シェルフ

これは大まかな物で、ローエンド、ハイエンド片側ののスペクトラムのレベルを変える事が可能です。

パラメーターとしては
Gein(レベルをどれだけ変えるか)そしてCorner Frequency(プロセスする部分としない部分を決める)。
物によってはシェルビングの周波数が固定されている場合があります、これが結構厄介になる事があるので自由に使える物を探しておきましょう。

またEQによってはシェルビングが使えないバンドが存在する場合もあります、しっかり探しましょう。

よくある使い方としてはシンバルの10k以上をまとめて持ち上げたりする事が考えられます。

シェルビングを使ったバランシング

シェルビングを挿して、フェーダーが不安定な物(フェーダーが決まらないからプロセッシングする事を忘れてはいけません)、を一度下げて、再びゆっくりフェーダー上げて行きましょう。
この時に周波数帯のある部分がやり過ぎにMixの中で感じる所まで上げてみます。

そしてTrebleかBassどちらが原因か、適切な方のシェルビングフィルターをかけてコントロールしてみましょう。

手順として
1.ゲインを上げてみる
2.そのフィルターがどの辺りの周波数をコントロールしているか聴く
3.良く無いと感じる帯域までフリーケンシ―を回して行く
4.調子が悪くない部分での変化を最小にするように気を付ける。

この後、出過ぎな周波数帯を落とす為にフィルターゲインを下げているので、バランスの中でこのトラック自体が最適なレベルになっているかをチェックする必要があります。
通常カットすればもう少しフェーダーを上げると音量のバランスがとれるはずです。
もしフェーダーを上げて同じ領域がミックスの中から飛び出ていたら、フィルターゲインコントロールを更に下げましょう。

やり過ぎを避ける為に

適切なゲイン量を見失う事はよくある事です、なので一度フリーケンシ―をセットしたら、ゲインをゼロにして、10秒ぐらいたってからもう一度修正していくと良いでしょう。

このやり方に限らず耳をリセットする習慣を身につけることはミックスのスピードと上達に必須な要素だと思います。

また良いバランスが出来たならそのチョイスに対して客観的になる必要があります。画家が細部を書きこんだあと、一度引くように、木を見て森を見ないという事が起こらないように。

調整の終わったEQのスイッチを切って元のバランスにおいてどんな問題が起こってるかを再度耳に入れましょう。そしてEQをオンにした時に完成するバランスを想像してみましょう。

これは自分でも最初に体感した時にびっくりした事ですが、フィルターを弄っている最中に自分の耳の感覚が無くなっている事がよくよくあります。その時は問題では無い帯域まで削っていたり、逆にまだまだ残っていたりという事があります。

上手くバランスが作れない時

そもそもシェルビングを選択するのが良いのかどうかを精査する必要があります。
例えば低音がブーミ―だなと思っていると、100~300辺りでもっこりしてるだけで、ローエンドの方は何も問題が無かったり。ローエンドのロスには特に注意が必要でしょう。

もしフィルターがある面でバランスを良くしてくれている、と思うならそのフィルターは残して、更なるフィルターを重ねるべきでしょう。何も良くなってないなら潔く諦めるべきです。

また諦める事も1つ大事な事です。勿論シェルビングだけの段階で諦めることはそうそうありませんが、スッキリ聴こえるけどパワーが無い、ややモゴっとするがパワーがある、こういう二択は序盤では往々にしてある事です。問題を認識した状態で撤退するならそれはそれで1つの経験になる事です。

最悪なのはEQで弄らずに放置する事、もしくはぐちゃぐちゃになったのをそのままOKにしてしまう事です。

通常シェルビングのようなワイドなプロセッシングには限界があるので、次はピーキングを使いましょう。

ピーキングフィルター

更に局所的な周波数特性の問題を解決してくれます。コントロールとしては三つ。
Gein:周波数領域で突いたり凹ませたりをする
Frequency:調整する周波数の真ん中の軸を決める
Bandwidth,Q,Resonance:より細かくどのようにブースト、カットするかを決める


ピーキングフィルターでもシェルビングとやる事は一緒です。
良いフィルタリングの設定になったと思ったら、一旦オフにしてオンにして正しいかどうかを確認。その後可能であるならばQ値を可能な限り広く調節する事を付け足しましょう。

大体のEQによる弊害は狭すぎるQセッティングから生まれます。狭くすると不自然だったり、痛かったり、非音楽的でない事がままあるからです。

ノッチフィルター(所謂激狭ピーキング)

狭いピーキングは音楽的で無いと言いながらよく使われるのがノッチフィルターです。
これは特定の音程を持ったノイズ、共鳴を潰す為に行います。よく使われるのがスネアドラムのふぁんという感じのレゾナンスです。

ピーキングで思い切ってゲインを上げて邪魔なレゾナンスを探し当てます。
こうして…


こう!


これに対して気を付けるのは、周波数が数Hzズレると意味を為さなくなる事。
また音程を持つ楽器に対して行うと、各音程によって周波数バランスが変わってしまうので基本的にあまり使えない事が上げられます。(つまり固定されたノッチフィルターは音が変わった時に違う倍音に作用してしまう)

ただどのパートにおいても、ロングトーンで鳴るもの、もしくは繰り返される音で、他の音程の時も常識的な範囲の変化で収まるなら使っても良いかと思います。

EPのミックスにおいてもリードシンセのハーモニクスとEQとアンプシミュレーターの絡みでA4音で強烈な倍音が出てしまっていたので、叩き潰しています。

あとはハムノイズとかにも使えますよね。

ただ、たった一つの周波数においてでも、強烈にピーキングする事はバランスを破壊したり、楽器の抜け感を完全に殺してしまったりすることがままあります。

なので必ず広いQと狭いQの両方で試す事をおすすめします。


まとめ

結構長くなってしまいましたね。これでミキシングにおけるEQの基礎、棲み分けの基本は網羅したはずです。もちろんアナログEQであったり、音作り的なEQであったりといのは様々なケースがあるのでこれと同じ様には作業できませんが、このステップを確実にこなす事で聴きやすいミックスには大きく近づくはずです。

また全てをEQで解決しようとするのも良く無い考え方です。例えば歪みをミックスのツールとして使う手法などは既にサンレコ紙面等でも紹介されている事です。あとはマルチバンドコンプの類とか。

ただしっかりとバランスを作りこんで、レベルを均し、EQで偏り、マスキングを解消すれば大分聴けるミックスになるのではないかなと思います。(11/30:コンプで時間軸でレベルを均す事はまだ触れていません)

もう一度基本に立ち返りたい時はこちらから。

コメント

人気の投稿